道路統計年報2020から橋梁事業傾向を読み解く

措置が見込まれる交通不能橋・通行制限橋

■市場のボリュームゾーン 桁橋多い県域
交通不能・通行制限比率高い特殊橋梁にも市場性
問題橋梁少ない長大橋セグメント 恒常的なメンテ効果か
金額では一般国道橋梁整備費上位エリア
福島県域など整備増勢 埼玉県域などは補修増勢

 国土交通省は道路統計年報2020を12月に公表した。同年報の調査対象は道路法が適用される高速自動車国道、一般国道、都道府県道および市町村道。一般道路とは、高速自動車国道を除いた一般国道~市町村道の計。国・都道府県道とは、一般国道および都道府県道の計。一般国道とは、指定区間および指定区間外の計。都道府県道とは、主要地方道および一般都道府県道の計。
橋梁についてみると、橋梁区分には高架の道路および桟橋も含まれ、橋長15m以上のすべての道路橋が対象。長大橋は橋長100m以上、中小橋は100m未満。通行制限橋は、道路法47条の規定により通行荷重などの制限を設けている橋梁。
道路統計年報は道路ストックの情報の塊だ。道路の点検や補修などメンテナンス市場に対するマーケティングや事業戦略のツールの一つとしても活用される。例えば橋梁の場合では、各県域の橋梁の多寡をはじめ、上部工使用材料や構造形式、橋長などの傾向により、地域の需要特性を探る手掛かりとなるからだ。例えば、鋼橋が多いなら塗替え、PCやRCが多いならひび割れ注入やシート補強、表面のコンクリート防食などの継続的な需要が見込まれる。溝橋が多いなら点検項目を絞って効率化できるとか、アーチやトラス、吊構造形式などの特殊橋梁や長大橋梁が多いなら、プラスアルファを見込める余地があるなどだ。域内の橋種並びに橋梁費の構成比や、交通不能・通行制限橋の傾向からも、市場性がうかがえる。
2020版を橋梁について、抜粋・集計して読み解いていくと次のことがわかる。
橋梁数が多い県域と、橋梁全数の7割超を占める桁橋が多い県域は上位10県域が同じで、橋梁のボリュームゾーンはここだ。交通不能橋や通行制限橋など問題を抱える橋のボリュームゾーンも7割を桁橋が占める点は同様。点検や補修など橋梁の維持管理においてもこのセグメントのマーケットは大きいと考えられる。橋梁数ではPCと鋼の別ではそれぞれ4割内外で拮抗、RCは15%程度だが、問題橋梁数でみると鋼橋の割合が上がり、PCが低下する。
特殊橋梁は橋梁全数の4%にも満たないが、橋梁数に占める問題橋梁の割合は高く、維持管理の技術や仕組み、そもそもの設計に対しても何らかの改善策が求められそうだ。木橋の7割超529橋、吊橋の6割超527橋、石橋の2割超63橋、斜張橋の1割強33橋、トラス橋の1割強191橋、アーチ橋の6%強166橋が交通不能・通行制限の問題橋となっている。
ほかに、橋長別でみると、15m~100m未満の橋梁が多い県域は、域内橋梁数が多い県域と一致する一方、100m以上では山口県域や岡山県域、大阪府域、埼玉県域、東京都域など、都市内交通県域や海上橋保有県域が上位となっており、域内橋梁に占める長大橋シェアでも政令市域でシェアが高率となっている。長大橋梁の問題橋発生率は、中小橋梁に比べ半分と低く、メンテナンスが手厚い結果とも考えられ、このセグメントに絞った付加価値技術も手堅い市場性も感じられる。
橋梁事業費でみると、ボリュームゾーンは一般国道の橋梁整備費で、金額の上位県域は、全橋梁事業費の金額上位県域と一致する。北海道域では整備費に加え一般国道橋梁補修費も2位につけている。橋梁整備費では福島県域、岐阜県域、宮城県域、三重県域、名古屋市域が橋梁整備費も上位で、かつ域内橋梁費に占める整備費の割合も高く、整備増勢エリアであることがわかる。橋梁補修費では埼玉県域が橋梁補修費も上位で、かつ域内橋梁費に占める補修費の割合も高く、補修増勢エリアであることがわかる。
また、エリア別のボリュームゾーンをみると、域内の5割以上の橋梁費が特定のセグメントに使われている県域は13しかない。うち12は一般国道橋梁整備セグメントの横浜市域、三重県域、岐阜県域、奈良県域、高知県域、宮城県域、岩手県域、沖縄県域、島根県域、福島県域、熊本市域、神戸市で、残り1つは主要地方道橋梁整備費セグメントの堺市域。
詳細は次の通り。

■橋長15m以上 17万5千橋超
PC橋45%、鋼橋38%、RC橋15%
100m以上は14%、30m未満で約5割
桁橋が73%、床版橋20%
橋梁数 北海道域が最多、兵庫県域、福島県域が次ぐ

詳細についてみていくと、2019年3月31日現在の橋梁個所数は17万5110で、上部工使用材料別でみるとPC橋が最多の7万7636橋で44・3%、次いで鋼橋が6万6034橋で37・7%、RC橋が2万6373橋で15・1%、鋼とRCまたはPCとの混合橋3347橋で1・9%、木橋が748橋で0・4%、その他が661橋で0・4%、石橋が311橋で0・2%。
橋梁延長は1万1640・815kmで、上部工使用材料別では鋼橋が最長で5576・194kmで47・9%、次いでPC橋が4231・563kmで36・4%、RC橋が1250・429kmで10・7%、鋼とRCまたはPCとの混合橋が498・459kmで4・3%、その他が48・814kmで0・4%、木橋が27・221kmで0・2%、石橋が8・135kmで0・1%。
橋長別では長大橋が2万4476橋、中小橋が15万634橋で、内訳は橋長200m以上が6%、100m~200mが8%、50m~100mが15・7%、30m~50mが21・9%、20m~30mが25・1%、15m~20mが23・4%。
構造形式別では桁橋が圧倒的に多く72・8%を占め12万7516橋、次いで床版橋が20・4%で3万5788橋、ラーメン橋が3%で5211橋、アーチ橋が1・5%で2618橋、トラス橋が1・1%で1842橋、吊橋が0・5%で837橋、斜張橋が0・2%で318橋、溝橋(カルバート)が0・6%で980橋。
所在地で分類すると、最も橋梁数が多いのが北海道域で1万3544橋‥紙面へ

■域内橋梁多い県域 桁橋、床版橋も多く
特殊橋梁は県域に偏り

 橋梁構造形式別でみると、橋梁の保有数が多い県域の上位(北海道域、兵庫県域、福島県域、岐阜県域、長野県域、愛知県域、広島県域、新潟県域、岩手県域、三重県域、福岡県域、大分県域など)と、桁橋、床版橋、ラーメン橋、カルバート(溝橋)が多い県域の上位の顔触れはほぼ一致するが、愛媛県域と熊本県域は床版橋が多い傾向がある。群馬県域、茨城県域、東京都域はラーメン橋が多い傾向がある。埼玉県域、佐賀県域、山形県域、栃木県域はカルバート(溝橋)が多い傾向がある。
一方、橋梁全数に対して3・3%のシェアしかない特殊橋梁(トラス橋、アーチ橋、斜張橋、吊橋)については、域内橋梁全数が多い県域の上位顔ぶれとは異なり、半分くらいが入れ替わる。北海道域、岐阜県域、長野県域は各種特殊橋梁も上位だが、新潟県域と福島県域はトラスのみ上位、兵庫県域と広島県域は斜張橋のみ上位、三重県域は吊橋のみ上位に残った。
新たに加わった和歌山県域、山梨県域、高知県域、奈良県域はトラス橋と吊橋で上位の傾向があり、吊橋ではこのほか徳島県域、浜松市域、静岡県域が加わった。
東京都域と群馬県域はアーチ橋と斜張橋で上位の傾向があり、アーチ橋はこれに加え大分県域、愛媛県域、鹿児島県域、熊本県域、宮崎県域など主に九州で上位の傾向、斜張橋は東京都域と群馬県域に加えて茨城県域、埼玉県域、石川県域など主に関東で上位の傾向がある。

 シェア70%超を占める桁橋では、最多は北海道域で9733橋、次いで兵庫県域4548橋、福島県域4456橋、岐阜県域4264橋、愛知県域3968橋、長野県域3874橋、新潟県域3400橋、広島県域3356橋、三重県域3317橋、岩手県域2992橋など。
絶対数では上位の顔ぶれに入っていないが、域内で桁橋率が高いのは山形県域79・6%、鳥取県域78・7%、青森県域78・2%、福井県域78%、滋賀県域77・8%など。
次いでシェア20%超の床版橋では、最多は北海道域で3247橋、次いで兵庫県域1181橋、岩手県域1123橋、福岡県域1073橋、広島県域1035橋、熊本県域1000橋、大分県域987橋、長野県域956橋、愛媛県域948橋、新潟県域914橋など。
絶対数で上位の顔ぶれには入っていないが、域内で床版橋率が高い地域は香川県34・1%、佐賀県31・7%、長崎県28・9%、沖縄県26・8%など。
トラス橋では最多が岐阜県域132橋‥紙面へ

■域内橋梁多い県域 鋼橋も多く
PC橋、RC橋は西日本が上位の傾向
石橋はほとんど九州 木橋は東日本が上位の傾向
都市内交通など地勢に加え、域内工場立地などが影響

 上部工形式別では、全橋梁数に占めるシェアが37・7%の鋼橋では、橋梁全数の多い上位県域と鋼橋が多い上位県域がほとんど同じで、北海道域が最多で7521橋、次いで岐阜県域が2446強、福島県域2433橋、長野県域2239橋、新潟県域2183橋、兵庫県域2110橋、愛知県域1929橋、三重県域1836橋、秋田県域1711橋、岩手県域1644橋など。
上位の顔ぶれにはないが域内の鋼橋率が高いのは大阪市域86・3%、名古屋市域60・6%、山梨県域が57・2%、横浜市域と札幌市域が56・4%、京都市域52・2%、東京都域51・1%など。軽量で長スパンが飛ばせ、現場架設が比較的早い鋼橋は、工事による渋滞を縮減したい都市内交通に多い傾向があることに加え、域内に地元ファブリケーターが立地する県域で上位になる傾向がみられる。
一方RC橋やPC橋は、セメント工場の立地域が上位の傾向がみられる。RC橋は最多が長野県域1215橋、次いで福岡県域903橋、山口県域873橋、大分県域849橋、広島県域843橋、兵庫県域817橋、愛知県域805橋、愛媛県域796橋、福島県域と三重県域が739橋ずつ、など。
上位の顔ぶれにはないが域内のRC橋率が高いのは北九州市域23・7%、栃木県域22・2%、和歌山県域21%、徳島県域20・9%、広島県域20・5% など。
PC橋は最多が北海道域で5174橋、次いで兵庫県域2821橋、福岡県域2596橋、広島県域2216橋、愛知県域2194橋、鹿児島県域2186橋、福島県域2182橋、大分県域2165橋、岐阜県域2111橋、島根県域2110橋など。
上位の顔ぶれにはないが域内のPC橋率が高いのは‥紙面へ

■橋長15m~100mは域内橋梁数多寡と連動
100m以上 都市内交通、海上橋県域で多く

 橋長別でみると、15m~100m未満の橋梁が多い県域は、域内橋梁全数が多い県域と一致する一方、100m~200m未満では山口県域や岡山県域が上位に、200m以上では大阪府域、埼玉県域、東京都域、岡山県域、山口県域など、都市内交通県域や海上橋保有県域が上位となっている。
域内橋梁に占める橋長区分の傾向を見ると都市内交通域で長大橋シェアが高いことが顕著で、100m未満の区分では政令市域以外の都道府県域では平均シェアとほぼ同傾向がみられ、政令市域ではシェアが低下しており、逆に100m以上の区分では政令市域で域内シェアが上がっている。
域内橋梁に100m以上200m未満の橋梁が占める割合が高い県域の上位は、大阪市域15・2%、仙台市域と名古屋市域がそれぞれ13・2%、静岡市域11・8%、北九州市域と広島市域がそれぞれ11・7%、岡山市域11・6%、千葉市域11・3%、熊本市域とさいたま市域がそれぞれ10・9%、山口県域10・6%など。全国平均は8%。
200m以上はさらに顕著で‥紙面へ

■措置が見込まれる交通不能橋、通行制限
絶対数では桁橋、床版橋、鋼橋が多く
割合では吊橋、木橋、石橋が高く

 早めに何らかの措置が見込まれる交通不能橋、通行制限橋については、交通不能橋が5533橋(長大橋270橋、中小橋5263橋)、通行制限橋が3530橋(長大橋410橋、中小橋3120橋)で、どちらも市町村道が桁違いに多い。橋梁構造形式別でみても、全形式で市町村道が最多となっている。上部工使用材料別でも同じ傾向だが、鋼とRCまたはPCとの混合橋の長大橋セグメントでは高速道路会社が最多となっている。
形式別の傾向では、橋梁全数のうち72・8%を占める桁橋が交通不能橋、通行制限橋とも7割を占めているというように、橋梁全数に占める形式のシェアと、交通不能橋・通行制限橋に占める形式のシェアがほぼ同じとなっているのが、ほかにラーメン橋、アーチ橋、トラス橋、斜張橋の各形式。一方、床版橋は橋数で20%超を占めるが、交通不能橋・通行制限橋のシェアは15%前後、溝橋は0・6%に対し0・1%と問題橋梁が少ない傾向があり、逆に吊橋は0・5%に対し8%弱と跳ね上がり課題を抱える橋梁が多いことが分かる。
構造形式区分別の橋梁数に占める問題橋梁の割合は、平均で5%(長大橋3%、中小橋6%)で、桁橋が同傾向の5%(長大橋3%、中小橋6%)、低い傾向にあるのが床版橋4%(長大橋2%、中小橋4%)、ラーメン橋4%(長大橋1%、中小橋5%)‥紙面へ

■2018年度 橋梁事業費8944億円(道路・都市計画街路)
橋梁整備費と橋梁補修費は1:0・76
31圏域で補修費が整備費上回る

 道路統計年報2020版で公表している2018年度の事業費のうち、災害復旧事業費や失業対策事業費などを除く、道路・都市計画街路事業費から、橋梁関連を抜粋集計すると、橋梁事業費は8943億9192万1千円で、このうち橋梁整備費は5071億4980万8千円、橋梁補修費が3872億4211万4千円、整備費対補修費は1対0・76となった。
このうち都道府県域は橋梁事業費7918億8215万5千円で、内訳は橋梁整備費が4507億3153万7千円、橋梁補修費が3411億5061万8千円、整備費対補修費は1対0・76となった。政令市域では橋梁事業費は1025億976万7千円で、内訳は橋梁整備費が564億1827万1千円、橋梁補修費460億9149万6千円、整備費対補修費は1対0・82。地方よりも整備が先行したと思われる都市部で補修費率が上昇している傾向がみられている。
橋梁整備費対橋梁補修費でみると‥紙面へ

■金額上位区分は 一般国道橋梁整備がほとんど
県域は橋梁事業費全体金額の上位と変化なく
唯一 次点に一般国道橋梁補修北海道域が入る

 一般国道区分の橋梁整備費(橋梁事業費のうちの35・5%を占める)並びに橋梁補修費(橋梁事業費のうちの17・2%を占める)の金額上位は橋梁事業費全体金額の上位と変わらず、変化としては橋梁整備費で東京が下位5県域に下落、橋梁補修費で三重が上位に入った程度。
主要地方道区分の橋梁整備費と橋梁補修費の金額上位も橋梁事業費全体金額の上位とほとんど変わらず、変化としては橋梁整備費(橋梁事業費のうちの6%を占める)で堺市域、群馬県域が上位に入り、名古屋市域と愛知県域が下落。橋梁補修費(橋梁事業費のうちの8・1%を占める)で山口県域、大阪県域、大分県域が上位に入り、福島県域、三重県域、名古屋市域が下落した程度。
一般都道府県道区分の橋梁整備費(橋梁事業費のうちの4・9%を占める)の金額上位は‥紙面へ

■橋梁費の域内シェア 5割超のセグメントも
一般国道橋梁整備費で12県域 横浜市域68%の高率
主要地方道橋梁整備費で1県域 堺市域で5割超

 ただ、県域別の橋梁事業費のなかみ、つまり各道路種別の橋梁整備費シェアと橋梁補修費シェアをみると、橋梁事業費の過多による上位順位とは異なった傾向がみられる。
橋梁事業費のうちの35・5%を占める一般国道の橋梁整備費をみると、横浜市域や三重県域などは、県域内の橋梁事業費の5割以上をこのセグメントに割り当てている。つまり、この県域では橋梁関連の発注金額の5割以上を一般国道の橋梁整備事業が占めているということになる。横浜市域が最も高率で68%、次いで三重県域が67・1%、岐阜県域65・3%、奈良県域64%、高知県域62・6%、宮城県域60%、岩手県域57・4%、沖縄県域55・6%、島根県域55・4%、福島県域51・7%など。
同様に橋梁事業費のうちの17・2%を占める一般国道の橋梁補修費をみると、相模原市域や大阪市域などで橋梁事業費の4割超をこのセグメントに割り当てている。相模原市域が最も高率で44・3%、大阪市域が43・7%、京都市域43・6%、大阪市域41・8%など。
橋梁事業費のうち6%を占める主要地方道の橋梁整備費をみると‥紙面へ

橋梁材料別地域別 橋梁保有数・保有率
橋梁形式別地域別 橋梁保有数・保有率
橋梁事業費
橋長区分別地域別シェア
道路法で定める道路