NEXCO中日本 再発防止委が中間まとめ /塗膜剥離剤を使用した塗替え現場火災受けて

暫定的な再発防止策(改善が必要な事項に対する再発防止策を立案)

 NEXCO中日本は、東名高速道路中吉田高架橋塗装塗替え工事による火災事故再発防止委員会の中間とりまとめを公表した。
東名高速の中吉田高架橋は2019年11月21日に、橋梁桁下での塗装塗替え工事において剥離剤による既設塗膜の除去作業をしていたところ、火災が発生し、作業員が1人死亡、10人が負傷していた。
暫定的な再発防止策として、塗膜剥離作業を行う現場においては、水性塗膜剥離剤を使用する場合においても、▽火花が出る工具の足場内への持ち込みを禁止することや、▽電気機器には防爆性能があるものを使用すること、▽養生シートも含め足場内で使用する全てのシートは、難燃性能または防炎性能があるものを使用すること、▽かき落とした塗膜くずは速やかに集積し、1日1回以上の頻度で搬出すること、▽常時換気と併せて、ガス検知器を作業班ごとに配備すること、などが示された。
中間とりまとめは現時点で、火災事故再発防止委員会で把握、検証した内容に基づき、延焼メカニズムを想定して、暫定的な再発防止策をとりまとめたもので、現在も関係機関による検証が継続中であり、新たな知見が得られた場合 は、再発防止策に反映していくという。
今回の中間とりまとめは、12月の第1回委員会において、現場状況からの点火源・可燃物となり得るリスクを抽出、1月の第2回委員会までに実験・検証を経てまとめたもの。
まず第1回委員会で点火・火災リスクの抽出として、点火源の特定においては、①現場において使用しないことになっていたディスクサンダーが使用されていた、②使用しない電気機器のコンセントについては抜くこととされていたが、抜かれていなかった、など一部で施工計画書の記載と異なる状況があったことを確認したが、これらが火災発生の原因となったのかは不明としていた。
また、現場の可燃物の状況としては、養生シートと、塗膜くず、塗膜剥離剤について確認、養生シートについては鉛・PCBを含む塗膜の剥離作業を行うに当たり、有害物質を含む塗膜くずの足場外への飛散防止および確実な回収を図る観点から、足場養生シート(防炎性)の上に、難燃性または防炎性を有しないポリエチレンシートの養生シートを2層積層していたことを確認した。
塗膜くずについては、床面に落ちたくずの粘度を指触確認して、まとめやすい湿潤粘土(ゲル)状になった時点で集積・回収していたことを確認。第三層目の養生シートにかき落した塗膜くずをくるみ、ビニール袋に入れて、足場内に仮置きし、足場外への搬出頻度は週に1回程度だったことも確認した。火災発生時は、11月19日 21日に剥離した塗膜くずが足場上に堆積した状況で、剥離剤を含む塗膜くずの堆積量は上り線が約400kg、下り線が約1500kgだった。
塗膜剥離剤は水性塗膜剥離剤を使用しており、引火点は100℃、有機溶剤中毒予防規則は非該当、消防法においては非危険物扱いで、ベンジルアルコールを含んでいることを確認した。
これらを踏まえ、第2回委員会までに、点火源の特定については、関係機関の検証中であり、特定困難であるため、火災事故現場の足場内にあった、養生シート、塗膜くずなどについて、可燃物となり得るかどうか検証した。実験内容は、養生シートについては燃焼性および延焼性の確認試験を、塗膜くずについては燃焼性および延焼性の確認試験と、発生する気化物質分析を実施した。
実証実験の結果は、まず養生シートについては、養生シート単体では点火源に対して一時的に燃焼し溶解するものの自消し、燃え広がるなどの延焼性は確認できなかった。
塗膜くずの燃焼性および延焼性の確認試験では、養生シートに引火した火は塗膜くずに延焼すること、また、塗膜くずの放置日数が長くなると、燃焼温度は高くなり、引火から盛火までの時間は短くなることが確認できた。
塗膜くずから発生する気化物質分析では、塗膜くずに引火した場合、延焼することが確認された。また、塗膜くずの剥離後の放置日数が長くなると、燃焼温度は高くなり、引火から盛火までの時間は短くなることが確認された。また水系を主とした塗膜剥離剤であり、液体では引火性・延焼性はないが、成分中にアルコールが30~50%含まれており、塗膜剥離剤を含んだ塗膜くずから 濃度などの条件によっては可燃物となり得るアルコール系の気化物質が発生することを 確認した。発生した気化物質は空気より比重が大きいことも確認した。
この結果、延焼メカニズムの想定としては、通常の作業環境であれば、水性の塗膜剥離剤が含浸した塗膜くずから剥離剤の成分であるアルコールなどが発生するものの、すぐに拡散し引火性や延焼性を有する濃度で滞留する可能性は非常に小さいが、事故現場においては、鉛などの有害物質の飛散等を防ぐため、養生シートを敷設しており、結果的に足場内の密閉性を高めることとなり、また、当日、換気設備を稼働させていなかったことと相まって、気化成分が空気より重いアルコールなどが可燃性ガスとなって足場内の底部に滞留し、なんらかの要因により引火した可能性がある‥紙面に続く

現場状況からの点火源、可燃物となり得るリスクの抽出 塗膜除去フロー
現場状況からの点火源、可燃物となり得るリスクの抽出