連載・現場の利益① 現場は利益の源泉 ~生産性に注目すると

ガイダンス

 国土交通省は2016年度を「生産性革命元年」と位置づけ、ITなどの先端技術を活用した「i-Construction」を機能させて、建設生産プロセスを高度化・合理化・効率化することで、施工品質を高めつつ建設業の生産性を2025年には2割上げようと掲げています。建設業の一角を占める橋梁業界も、i-Conの一環である「i-Bridge」に取り組んでいます。
では、国交省の掲げる「生産性向上」とはなにか。文字通り、生産年齢人口が減り、建設業も人手不足が予想されるなかで、少ない人数でより多くの仕事をこなせるようにすることですが、大きなポイントとして「建設現場を製造業の工場のように」と示しています。先に紹介した「2025年には生産性2割向上」の2割の根拠、これも現状で製造業が建設業よりも2割程度生産性が高いから、これを理由の一つにしているそうです。
一方で、「今のところまだ人もいるし、新しいやり方なんて・・、覚えるほうが手間だ」という現場の声も聞こえてきます。ただ、もう少し耳を澄ましてみると、国交省は「建設業を3Kから新3Kへ」と踏み込んだことも言っています。生産性を上げると、「キツイ、キタナイ、キケン」から「希望が持て、休暇が取れ、給料が良い」へと変わると言っているのです。
なぜ、生産性を上げると、「休暇が取れ、給料が良い」世界が眼前に広がるのか。ちょっと、数行戻ってみると、「建設現場を製造業の工場のように」が目にとまりますので、ここから紐解き、の連載の本題に入っていきたいと思います。
国交省の主眼は、人手不足の時代が来ても、施工品質を高めつつ省力化し、構造物の安全・安心を長期で守っていくことに置かれていると思いますが、私は専門である生産工学の観点で、現場のコスト管理をきちんとすると、現場の利益がリアルタイムで読めるようになり、現場の無駄を省きやすくなって、現場が効率化してくることで、結果的に生産性が上り、利益も増え、「休暇が取れ、給料が良い」という側面から、お話したいと思います。
例えば、誰もが知っているトヨタ。トヨタは世界中の学者や経営者に研究されている会社です。トヨタの利益の源泉は何か。「クルマを売っているんだからクルマでしょ」それはそうかもしれませんが、「トヨタの利益の源泉、他者に勝ち、生き残るその競争優位は、クルマそのものでなく、むしろクルマの生産過程で利益を増大する仕組み、トヨタ生産方式にある」とさえ言われています。「生産現場を徹底的にカイゼンして、無駄を省く」んです。建設業の現場と近い話になってきましたね。
この考え方はいろんな業界でも手本にされているんですよ。例えば、スーパーなどでは、商品を棚に並べる時に、今までは片手で並べていたものを、両手で並べるようにカイゼンすることで仕事の効率が上がり、店頭の欠品による販売機会の損失が抑制できて、売上(=生産性)が上る、みたいなこと。病院などに行くと、廊下にミドリやアオのテープによる導線が敷設してあり、「向こう側にミドリの線を伝って行ってください」などと言われますが、簡便な手法で速やかに交通整理できますよね。看護士や事務員が、交通整理で本来業務の手が止まるような無駄を、このカイゼンで最小化しているんですね。いちいち手が止まっていては、時間当たりに対応できる患者の数が減ってしまいます、つまり売上げなり儲けも減ってしまいますからね。
現場の生産性と利益の関係、なんとなく感じてもらえたかと思いますので、ガイダンスはこのくらいにして、本題に入っていきましょう。

 では‥紙面に続く

この連載は野口道孝さんが執筆します。

野口道孝・ニックスジャパン株式会社代表取締役。立命館大学卒業後、中堅建設会社、経営コンサル会社を経て独立。生産工学の視点から現場ならびに建設会社のコストと利益の構造を分かりやすく整理して経営改善につなげる「KUROJIKA」、「MIYABI」などのソフトを開発。国交省からの研究業務受託のほか、各地で講演なども多数。