国交省 橋梁定期点検3巡目の方向性示す/新技術を積極活用、点検資格創設など/措置の一つ「監視」にモニタリング活用計画

3巡目定期点検の方向性について(案)

 国土交通省は、道路管理者に義務付ける5年に一度の全面的な近接目視点検で、3巡目のサイクル(2024~28年度)の方向性を示した。新技術を積極活用しながら、施設ごとに最適な手法を選択し点検の実効性を高めるもので、定期点検を適切に実施するための判断基準を示す「参考資料」と、新技術の「性能カタログ」の拡充案、人材育成に向けた「点検技術者資格」の創設などを提示した。特に参考資料案は、新技術利用のガイドラインで不足しているモニタリングやセンシング技術などの点検を支援する技術の活用を判断するための考え方を整理。これらの技術を活用して措置の一つである「監視」の計画を策定するための考え方もまとめる。性能カタログの対象技術は策定時(19年2月)に画像計測と非破壊検査(16技術)だけだったが、拡充により計測・モニタリング技術も加え計80技術とすることが示された。
定期点検のさらなる効率化・合理化などについて委員から意見聴収した社会資本整備審議会道路分科会第12回道路技術小委員会(委員長・二羽淳一郎東京工業大学教授)の審議結果として示したもの。小委では、道路橋定期点検要領(H31.2)を踏まえ、定期点検の目的と達成水準に照らした3つの課題、①そもそも見えない部位・変状がある、②見えても評価・考察が難しい部位・変状がある、③ある橋の全体をくまなく近接することを一律に求めるとき、部位によっては過剰となる場合があり得る-、に対する合理化・解決策として、▽モニタリング技術などを活用した特定部位・部材の参考資料の充実▽新技術の性能カタログの充実、の審議に取り組んできた。
今回の小委での審議・報告事項の柱は主に4つで、①定期点検の更なる効率化・合理化に向けた取組について、②点検技術者の質の確保について、③新材料・新工法の導入について、④維持管理・アセットマネジメントのためのデータの活用・整備について。このうち、今回橋梁に関係した事項は①~③で、①では▽公募した技術の検証結果、カタログ掲載の報告、定期点検参考資料の審議▽点検支援新技術のレベル分けの審議を、②では▽3巡目点検の方向性と点検技術者(知識と技能を有する者)の検討の状況(資格制度)等の報告、③では▽横断歩道橋におけるケーススタディ(性能の確認手法、技術公募、審査)の報告▽新技術の活用に向けた技術基準類の検討・技術の検証の仕組み等の報告、をした。

性能カタログ(案)の作成方針

■性能カタログ掲載技術拡充 梁60技術

 性能カタログの拡充に向けては、ガイドライン、性能カタログの概要が示された。ガイドラインは、定期点検業務のなかで受発注者が使用する技術を確認するプロセスなどを例示するもの。性能カタログは、国が定めた技術の性能値を開発者に求め、カタログ形式でとりまとめたもので、受発注者が新技術活用を検討する場合に参考にできるもの。現行の性能カタログは、これまでに国で技術公募し、国管理施設などの定期点検業務で仕様確認を行った16技術を対象に作成(平成31年2月時点)されている。この16技術のうち、橋梁適用技術は12技術で、画像計測技術(カメラを搭載したドローンやアーム型ロボットで道路橋の損傷写真を撮影擦る技術)が7技術、非破壊検査技術(ドローンやアーム型の機械に搭載した打音機構や赤外線などによりコンクリートのうき・剥離を検査する技術)が5技術。
小委ではこの拡充に向けた検討をし、技術の特徴を踏まえて2019年度に応募があった技術を「画像計測技術」、「非破壊検査技術」、「計測・モニタリング技術」、「データ収集・通信技術」に4分類し、技術分類ごとに国がカタログ案を作成、1~2月の試験を通じて開発者がカタログ項目に対する性能値を整理した。この結果、2020年5月時点で掲載を予定している技術は橋梁60技術、トンネル17技術、その他3技術の合計80技術が掲載案として示された。
合わせて、定期点検業務を遂行していくなかでの、性能カタログと、参考資料、技術マニュアルの関係も整理。性能カタログは、定期点検者が機器などを用いて適切に調査(計測)できるよう、機器などの原理や適用条件、性能値について、項目を国が、性能値を開発者が整理・作成したもの。技術マニュアルは、現場でこれらの機器などを適切に活用するために必要な情報を開発者が整理・作成したもの。参考資料は定期点検者が調査目的に応じて機器などを用いた調査(計測)計画の立案や結果の活用などを適切に行えるように、判断の考え方を国が作成‥紙面へ

性能カタログ(案)の目次構成案①
性能カタログ(案)の目次構成案②
性能カタログ(案)の目次構成案③

■計測・モニタリング技術で措置の一つ「監視」を/3巡目点検レベル4

 特に参考資料については、道路施設の形式、部位・部材、構造等の条件、定期点検の目的に応じて、定期点検を適切に実施するにあたっての判断の考え方を整理するものであるため、今後、効率的な点検が可能となるよう、カタログとあわせてさらなる拡充を目指している。例えば、新技術利用のガイドラインでは不足しているモニタリング、センシング技術、非破壊検査技術などの点検支援技術を定期点検に活用する際の判断の考え方もまとめる。具体的には、計測・モニタリング技術を活用して措置の一つである「監視」の計画を策定するための考え方についてまとめるなどする。
定期点検3巡めに向けた新技術の活用レベルも示され、人が定期的に現場で近接目視や打音検査により状況を把握する1巡目のやり方から、徐々に計測・モニタリング技術の活用を拡大していき、3巡目からはレベル4という機器が計測し、部位・部材・損傷ごとに診断が定量化される段階となるタイムテーブルが示された。
点検技術者の質の確保としては、最適な手法(技術)を選択できる技術力を持つ技術者として点検技術者資格制度を創設‥紙面へ

3つの資料の相互関係
定期点検の参考資料
定期点検で活用する技術のレベル分け(案)

■新技術の導入 歩道橋床版でケーススタディ/夏以降に現場活用試行/立体横断施設設置基準改定へ

 新技術の導入については、2020年度新技術導入促進計画に示されている橋梁関連3技術のうち、特に橋梁関連の新技術導入におけるあり方を検討するケーススタディ事業と位置付けられている「軽量で耐久性に優れる新しい横断歩道橋の床版技術の公募」事業を提示。新技術(新材料・新工法)の活用を推進するためには、▽新技術に求める要求性能の明示▽新技術の性能の確認方法を明示▽新技術が求める性能を満足していることの確認(技術の実証)▽従来技術との比較やラインナップの明示▽性能や性能の確認方法の検討、個別技術の確認(技術の実証)を行うための体制の強化が必要-の5つの課題への対応を、「軽量で耐久性に優れる新しい横断歩道橋の床版技術の公募」事業のプロセスで検討していく。
腐食が進行している横断歩道橋の床版について、早急に適切な措置を行うことを目的に、管理者としてのニーズおよびリクワイヤメントを明示した上で、新しい材料を想定した床版補修技術の公募を2019年12月11日~2020年1月14日に実施。6月の横断歩道橋リニューアル検討会での公募結果の確認、報告を経て、夏以降に直轄の横断歩道橋の修繕工事現場で活用試行して結果を確認し、立体横断施設設置基準の改定につなげる。
基準の改定の方向性には、①腐食等による床版の踏み抜き、腐食片等の落下による第三者被害が生じさせない技術の採用、②床版、階段接続部など、点検しにくい箇所を減らし、維持管理の省力化、③①の達成にあたり、必要となる高耐久性の材料が使用できるように、求める性能と性能を確認する方法を整備(性能規定化)をあげる。
現行の標準設計で示されていた横断歩道橋の床版構造では、▽舗装の目地などから水が床版内に侵入して滞留し、内部から腐食が進行するため、損傷が発見しにくい、▽鋼板の腐食・落下により、第三者被害が生じる可能性がある、などの課題が顕在化している。そこで、管理者のニーズとして①補修によって同じ損傷を生じさせない②補修の際に既存の構造に影響を与えない③補修コストの低減や維持管理の省力化の3点を設定、リクワイヤメントとして①腐食しないまたは腐食しにくい高耐久性を有する床版②従来の床版よりも軽量な床版③従来の床版よりも安価に施工・管理できる床版を設定。技術を公募し、新形式床版技術としてFRP材料で4技術、コンクリート材料で4技術、腐食しない金属材料で2技術、既存床版を活用した防食技術として2技術の計12の応募技術について検討‥紙面へ

軽量で耐久性に優れる新しい横断歩道橋の床版技術の公募

■道路メンテナンス事業補助 20年度は2223億円/長寿命化修繕計画に基づく修繕に補助

 加えて報告事項として、道路メンテナンスの1巡目点検結果を踏まえた対応として創設された道路橋梁などの老朽化対策にかかる個別補助制度(道路メンテナンス事業補助制度)が2020年度予算で2223億円を計上していることも示した。
道路の点検結果を踏まえ策定される長寿命化修繕計画に基づき実施される道路メンテナンス事業(橋梁などの修繕、更新)に対し、計画的かつ集中的な支援をする制度。背景には点検結果を踏まえて2018年度までに修繕に着手した橋梁が、地方公共団体管理で20%にとどまり、措置が遅れて‥紙面へ