吊構造橋梁多い十津川村 橋梁長寿命化修繕計画/人道吊橋のメインケーブル維持管理4技術公募

十津川村橋梁長寿命化修繕計画

■十津川村 人道吊橋の維持管理本格化/人道吊橋のメインケーブル維持管理4技術公募/レーザーケレン、重防食テープ ちかく実証開始/移動足場、素線診断技術は引き続き求める

人道吊橋が多く架かり風光明媚なスポットとしても知られる十津川村が、本格的な吊り橋の維持管理に乗り出した。初弾として、昨年10月24日に開かれたインフラメンテナンス国民会議近畿本部フォーラムで、村の技術のニーズと、企業のシーズのマッチングイベントを開催、近く応募があった2技術・2社の実証をはじめる。村のニーズは4技術だが、企業側から応募のなかった残る2技術▽ケーブルの点検作業の移動吊足場工法▽ケーブル素線の健全度診断技術、も引き続き求めており、村の担当主幹によれば、「技術、ノウハウを持っている企業などがあれば、インフラメンテナンス国民会議近畿本部を通じて知らせて欲しい」という。
村は多くの人道吊橋を抱え、担当主幹によれば「吊橋についての維持管理マニュアルなどは整えきれておらず、これまでは担当者の経験と勘に頼るところが大きかった。架設後50年を迎えるような橋も出てきており、今回、インフラメンテナンス国民会議で機会を捉え、吊橋の維持管理のニーズを出した」という。ただ、「村でマニュアル類をまとめるのは困難」なため、土木研究所などで吊構造橋梁の維持管理マニュアルづくりなどに取り組まれていることもあり、「できれば、そうしたほかの機関でまとめられたものを参考にして利用していきたい」考えという。
村がインフラメンテナンス国民会議で出したニーズは「人道吊橋のメインケーブル維持管理技術」。人道吊橋の維持管理に際しての、メインケーブルを利用した軽量な移動足場と、ワイヤ ーケーブル(より線)の錆が残らないケレン技術などを求めたもので、具体的には▽ケーブルのケレン技術▽ケーブルの長寿命化塗装技術▽ケーブルの点検作業の移動吊足場工法▽ケーブル素線の健全度診断技術の4項目を提示。求める条件として▽設計荷重が不明であることから、できるだけ軽量で移動可能な作業足場であること▽ケレンおよび塗装は作業足場での施工が可能なこと▽地元建設業者でも容易に設置、施工が可能なこと、という3要件を示した。
ケーブルのケレン技術とケーブルの長寿命化塗装技術には各1技術・1社が技術提案し、近く実証に入る。
長寿命化塗装技術には、阿南電機が米国TRENTON社製 ウルトラワックステープを提案。同社によれば、世界で初めてマイクロクリスタリンワックス(微結晶石油系ワックス)を不織布に含侵させたテープ状の重防食材料で、複雑な形状(吊橋ケーブル、ボルト添接部など)にも容易に成型貼付で、30年以上防食性能が持続するなどの特徴があるという。
ケレン技術にはフルサト工業がレーザーを利用した剥離工法・レーザーケレンを提案。同社によれば、レーザーケレンとはレーザーを照射した際に発生する衝撃波(レーザーアブレーション)やレーザーによる熱量を利用して、錆や塗装を母材表面から剥離する技術で、グラインダーなどでは処理できなかった凹凸の多い部材や、鉄だけではなく、木、アルミ、石材、コンクリートなどの防錆が可能で、粉塵の飛散が少なく廃棄物処理のコストが縮減できるなどの特徴‥紙面へ

■近年関心集める レーザーケレン

 レーザークリーニングやレーザーケレンは、橋梁の塗膜や錆の除去用途で近年関心を集めている技術。国産技術としてはトヨコー(富士市)の「CoolLaser」が「レーザーによる表面処理技術を活用した素地調整方法に関する研究開発」において、2019年12月に土木研究所の「革新的社会資本整備研究開発推進事業」に採択されるなどの動きがある。ほかに、光響(京都市)の「レーザークリーナー」、クリーンレーザージャパン.プロ(福井市)の「クリーンレーザーシステム」、東成イービー東北(郡山市)の「レーザクリーニング」、大松精機グループ(倉敷市)の「D-LASER」などが知られる。トヨコーと鈴与建設の共同出資会社のフォーカス・エンジニアもCoolLaserを取り扱うほか、好川産業(大阪市)も、十津川村で実証するフルサト工業が開発した「Fiber Laser」を取り扱い、塗膜剥離剤工法の「パントレ」や、IH塗膜剥離機「メクレル」などのラインアップ‥紙面へ

■十津川村長寿命化修繕計画/173橋 維持管理費57億6900万円/うち吊橋は44橋 36億8600万円

 十津川村が2018年10月にまとめた橋梁個別施設計画によると、管理橋梁は173橋(うち吊橋は44橋で25%)で、橋長100m以上は17橋で、吊橋が12橋、単純ランガーが2橋、トラスが1橋など。
判定区分は健全なⅠが7橋で4%(うち吊橋は2橋で、吊橋の4・5%)、予防保全段階のⅡが86橋で50%(うち吊橋は13橋で29・5%)、次回点検までの修繕が求められている早期措置段階のⅢが68橋で39%(うち吊橋は17橋で38・6%)、緊急措置段階のⅣが12橋で7%(うち吊橋は12橋で27・2%)。
これを受けて、173橋に対し、2018年度~2027年度までの10年間の個別施設計画をたてた。対策費は57億6900万円で、まず当面の5年間はⅢ、Ⅳ判定の橋梁修繕工事を最優先に取り組む。このうち吊橋は36億8600万円で、金額ベースでは64%を占める。事業費6000万円以上の26橋のうち、上位22橋は全て吊橋が占め、吊橋以外は3橋のみ。1億円以上は15橋で、最大は3億5000万円の谷瀬大橋(吊橋、297・7m、Ⅲ判定、架け替え済)、次いで3億円の二津野大橋(吊橋、193・2m、Ⅲ、架け替え)、2億5000万円が2橋で猿飼橋(吊橋、鋼橋、143・4m、Ⅳ、架け替え)と、旧川津大橋(鋼二鉸補剛吊構吊橋、178・8m、Ⅳ、アンカ-取替工、ワイヤ-等防食工、床板張替工、撤去予定)、2億2000万円の滝之穴橋(吊橋、175・6m、Ⅳ、架け替え、修繕済)、2億円の林橋(吊橋186・3m、Ⅲ、架け替え)、1億8000万円が2橋で込之上橋(吊橋、161・2m、Ⅲ、架け替え)と、鹿淵橋(吊橋、150・6m、Ⅲ、架け替え)、1億5000万円が2橋で池穴橋(吊橋、117・5m、Ⅳ、架け替え)と、赤嶋橋(吊橋、85・5m、Ⅲ、架け替え)、1億3000万円が2橋で大野出合橋(吊橋、84m、Ⅳ、架け替え)と、舟渡橋(吊橋、97・9m、Ⅱ、架け替え)、1億2000万円が2橋で湯之原橋(吊橋、112・8m、Ⅳ、主索等ワイヤ-張替、床板張替)と、下地橋(吊橋、62m、Ⅲ、架け替え)、1億1000万円の柳本橋(吊橋、90m、Ⅲ、架け替え)。
2018年度は設計3橋(うち吊橋は0橋)、工事3橋(うち吊橋は0橋)、19年度は設計11橋(うち吊橋は0橋)、工事3橋(うち吊橋は0橋)、20年度は設計13橋(うち吊橋は1橋)、工事9橋(うち吊橋は0橋)、21年度は設計13橋(うち吊橋は1橋)、工事10橋(うち吊橋は0橋)、22年度は設計19橋(うち吊橋は12橋)、工事10橋(うち吊橋は3橋)、23年度は設計8橋(うち吊橋は0橋)、工事19橋(うち吊橋は12橋)、24年度は設計18橋(うち吊橋は0橋)、工事8橋(うち吊橋は0橋)、25年度は設計23橋(うち吊橋は0橋)、工事18橋(うち吊橋は0橋)、26年度は設計21橋(うち吊橋は3橋)、工事23橋(うち吊橋は0橋)、27年度は設計18橋(うち吊橋は12橋)、工事21橋(うち吊橋は3橋)。
架け替えは24橋ですべてが吊橋。合計金額は31億3500万円で、173橋の長寿命化修繕計画で予定する概算費用の54%を、吊橋対策費用の85%を占める。主索の張替えや取替え、防食などメンテ関連は13橋で5億2700万円。
計画では橋梁ごとの健全性を点数でも評価。各部材を主桁、横桁、床版、下部構造、その他として重み付けをし、定期点検の結果で、主桁と支承はⅢ判定が20点、Ⅱ判定5点、横桁・床版・下部構造・その他はⅢ判定10‥紙面へ

十津川村長寿命化修繕計画集計
十津川村人道吊橋維持管理の考え方