特集・道路メンテナンス年報2017年度版

点検はほぼ計画通りに進捗/一方、Ⅱ判定の予防保全、Ⅲ・Ⅳ判定の事後保全 その後の対策低調/地方財政は臨財債や減債基金に懸念 人口減で広がる1橋の格差/求められる対策のトリアージ

1橋の格差1
1橋の格差2

H26-29点検区分と判定集計
Ⅳ判定対策未着手リスト

国交省は8月28日、17年度末時点の道路点検実施率を公表した。省令で14年7月から全道路管理者に5年ごとの近接目視を義務付けている延長2m以上の橋梁(計約72万3495橋)とトンネル(計約1万0878万本)の点検実施率がほぼ計画通りに進展している。橋梁は80%(前年度末比26ポイント増)、トンネルは71%(24ポイント増)に達した。ただ、14~16年度に点検が行われた橋のうち、地方自治体が管理する要修繕ストックの対策着手率は10%程度にとどまっている。
14~16年度の定期点検結果に基づく判定結果では、修繕の必要性が高い順に「緊急措置段階」または「早期措置段階」と判定されたストック数は橋梁が15%の4万2438橋、トンネルが40%の2304本に上る。
一方、16年度までに橋の修繕設計・工事に着手したストックは、道路管理者別で、国交省(要修繕ストック1997橋)が62%、高速道路会社(1174橋)が36%であるのに対し、都道府県・政令市等(1万2536橋)が9%、市町村(2万6731橋)が13%にとどまっている。国や高速道路会社と比べ自治体の対応の遅れが目立つ。
国土交通省がかねてから、今後2060年度までに同省が所管するインフラ(道路、港湾、空港、公営住宅、下水道、都市公園、治水、海岸)の維持更新に必要な費用は190兆円と試算し、国や自治体のインフラに配分する予算が現状の8.3兆円程度の規模のままだとすると、2037年ごろから財源不足に陥り、新たな建設ができなくなるのはもちろん、現在のインフラの約16%程度にあたる30兆円は更新できなくなるだろうと公表してきた。
一方、総務省は「公共施設及びインフラ資産の将来の更新費用の比較分析に関する調査結果」(2012年4月)をまとめた。これによると、市町村が今後40年間で必要とするインフラの更新費用は年間約8兆円で、住民一人当たりにすると年間約6万4千円となる。これを自治体の規模別でみると、人口250万人以上の自治体では約4万円なのに対し、人口1万人以下の自治体では23万8千円と6倍近くに跳ね上がり、その負担の格差が大きい。
また、内閣府は3月の経済財政諮問会議で、今後40年間で必要になる公共インフラ施設の維持補修・更新費を初めて試算した。損傷などが起きた後に対処する事後保全手法を採用する前提で試算したところ、2015年度から40年間の累計で必要コストが547兆円に達すると算出した。全国で国や地方自治体が管理している土木インフラ施設や建築物のストック量などを参考にして大まかに試算したもので、郵政関係の施設は含んでいないが、政府による国土交通省所管以外の施設も含む、ほぼすべてのインフラや建築物を対象にした初めての試算だ。内訳をみると、15年度から40年間の累計額のうち、土木関連インフラ施設の維持補修・更新には399兆円かかると見込まれている。インフラ施設の全体の維持補修・更新費の伸び率を見ると、平均で15~20年度は3.1%(うち土木インフラ施設は2.7%)、20~25年度は2.3%(2.3%)、25~45年度は1.5%(1.6%)、40~54年度は0.5%(0.8%)と予測した。さらに、維持補修・更新費のピーク年度をインフラ施設全体と土木インフラ施設は約60年後の74年度、建築物は約30年後の45年度となると予測している。15年度の水準と比較すると、インフラ施設全体の維持補修・更新費は1.78倍、土木インフラ施設は1.89倍とみている。
足もとの自治体はどうなっているのか。
自治体の経費は大きく性質別に、義務的経費、投資的経費、その他行政経費に分類されている。義務的経費は経常的経費ともいい、現行の経常的な事務事業や行政水準を維持していくための経費のことで、庁舎の管理費(光熱水費など)や職員人件費などがこれにあたる。道路や橋梁などのインフラを備えた自治体に、整備費や維持補修費、更新費など一定規模の費用がかかるのは当然なのだが、自治体予算では、この本来義務的経費であるはずのインフラにかかる費用が、切りやすく先送りしやすい経費である投資的経費に分類されているとして、特に笹子トンネルの事故以降、懸念の声が発せられるようになってきた。国交相の諮問機関である社会資本整備審議会の議論の場ではたびたび識者から、一時議論があった環境税を例に、インフラのメンテナンス費用を目的税化してはどうかという意見が出る。
右肩上がりの国の借金に対し、地方の借金はこの10年間で200兆円前後と横ばいだが、中身を見ると潜在的なリスク、臨時財政対策債(臨財債)の急増を懸念する声がある。自治体の財政不足は国が地方交付税で補う仕組みだが、01年度以降は交付税の財源が足りなくなり、一部を臨財債で補うようになった。臨財債は赤字地方債とも呼ばれ、自治体が借りて、返済資金は国が交付税で補うことになっているため、多くの自治体では「国の借金」と認識し、財政健全化法の指標にも参入されない。臨財債はこの10年で3倍に膨れ、50兆円を超え、識者からは、将来国が臨財債の仕組みを維持できなくなる可能性があるとの指摘も上がってきている。加えて、今春には自治体が借金の返済に備えて積み立てる積立金の減債基金の残高が19道府県と10政令指定市で総務省の基準より2兆3千億円少ないことも分かった。
また、国立社会保障・人口問題研究所の試算では国内の45年の人口は15年比で16%減る。高齢化で社会保障給付費も当面増え続ける。15年時点では1橋当たり175人で支えていたものが、45年には147人へと負担感が上る。都道府県域別にみると島根県と高知県は1橋を36人で支える計算になる。
国交省の社整審では、法定点検が1巡すれば、より精度の高い維持補修・更新費の将来推計ができるとして、資産に意欲的で、一方、インフラのメンテナンスサイクルを足もとで回していく地方の自体の維持を視野に、地元企業と大手企業とのあり方の議論なども緒に就く。加えて、国交省は18年度中にも橋とトンネルの定期点検規定を見直し、点検作業の高度化と効率化につなげる。新たに施設の老朽度合いなどに応じ点検の内容や方法を設定する考えで、ロボットやセンサーといった新技術の活用促進方法も視野に入れている。
【用語定義、総務省統計資料から】
▽投資的経費とは,道路,橋りょう,公園,学校,公営住宅の建設等社会資本の整備に要する経費であり,普通建設事業費,災害復旧事業費及び失業対策事業費から成っている。
▽実質公債費比率とは,地方公共団体におけ・・・9月24日付紙面に続く